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私たちは次の時代に合った
豊かさを探している
高度経済成長は、戦後の荒廃した町並みを変え、多くの人々に安心と健康を届け、人々を豊かにしました。物心ともに貧しかった時代から40年以上をかけ、日本は世界からも認められる国になったのです。
しかし、1990年代以降、豊かになった私たちは、次にどのような未来をつくってゆけばよいのかという指針を見失い、長い停滞期に入っています。
人口動態をみても、日本はどの国よりも早く高齢化比率が高まり、成熟期に入りました。欲しいものを手に入れることが豊かさの証であった頃と比べると、私たちはすでに多くのものを手にすることができています。
一方で、多くの社会問題は解決できていません。日本は豊かになっているにもかかわらず、世界における幸福度ランキングでは上位に入ることが無いばかりか、下から数えたほうが早い状態が続いています。
これまで私たちを支えてくれたシステム全体が、次の時代に合わせて変容していく必要があります。しかし、儒教の影響を強く受けている日本には、組織の風通しが悪く、変容が起こりにくいという課題があります。
イノベーションを起こしていく
企業がとる戦略とは
事業戦略も変容を迫られています。これまでは「最高品質」「最速で届ける」「最低価格で提供する」が基本でしたし、それが通用する時代でした。
「最高品質」はもちろん今でもとても大切な価値です。しかし、携帯電話がそうであったように、国内メーカーが軽さや薄さ、通話品質、写真の画質でしのぎを削っている間にiPhoneが登場し、ほぼすべてのメーカーが撤退していきました。そこにあったのは、顧客の役に立つだけではない、顧客すら気づいていない、奥底にあるインサイトをつかみ、提供するというイノベーションでした。
同様のことがTVについてもいえます。薄さや4Kなどの画質にこだわるあまりに、顧客には差がわからない最高品質を追求してしまう。そうしているうちに、低価格で製造できる海外メーカーが顧客が求める十分な品質の製品を提供し、国内メーカーはシェアを大きく落とすことになりました。
では「最速で届ける」という戦略はどうでしょうか? まだ国内における流通網が整備されていない時代には、到着までの速度はじゅうぶんな競争力でした。ただ、近年はどの宅配事業者も整備を進めたため、お届けまでの時間では差別化が難しくなっています。さらにいえば、最速で届けるためには大きな設備投資が必要となります。資本の原理からどうしても大手が強くなることは否めません。
そして、企業が選択しやすい「最低価格で提供する」という戦略についても考えてみましょう。顧客はもちろん価格が安いほうがいいですし、企業側もその価格を下げるために様々な努力を行ってきました。しかし、価格を下げることは多くの場合、品質を犠牲にすることでもあります。また、それを製造する人々の賃金に影響する選択をせねばならず、企業内のモチベーションを下げてしまうことにもつながります。そして、この戦略も、資本力が大きければ大きいほど量の効果を出せるために、規模の小さいほうが生き残ることは非常に難しいといえます。
これらの戦略をすべて否定するわけではありません。今も大事ですし、これからも大事であることは間違いありません。ただ、そのような戦略だけでは、変化しつづける時代の中で、常に顧客を魅了するサービスを届けることが難しくなっていることも事実だと思います。
最愛という選択を
顧客のマインドは常に変わりつづけています。今は認知され、支持されている製品/サービスであったとしても、将来に同じ支持を得られるかどうかはわかりません。一方、時代や価値観の変化の中でも、顧客に愛されつづける企業があります。
企業は顧客の幸せを願い、その顧客にとって必要な製品/サービスを届けていく。そして顧客は、そのような体験を通じてファンになり、企業を支えていく。
ここで、忘れてはならないのは、そのような事業活動を生み出すのはスタッフであり、スタッフ側の企業に対する想いもとても大切であるという点です。
スタッフが楽しんでいない/愛していない事業に、どの顧客が熱狂するでしょうか?
スタッフからも顧客からも必要とされ、愛される企業が今、求められているのです。
fascinateではそのような企業を「愛される企業 Lovable Company®」と呼んでいます。
エンゲージメントが
きっかけであり
すべての中心
「engagement」という言葉は、マーケティング業界では“顧客エンゲージメント”というような表現で頻繁に使われてきましたが、直訳すれば「婚約」「誓約」「約束」などの意味を持ちます。最近では使用シーンが広がり、スタッフと企業との関係を指して「スタッフエンゲージメント」と言うこともあります。
このように「エンゲージメント」という言葉は、使うシーンによっても意味合いは少しずつ異なりますが、その中心的な意味は「深い感情でつながり合える関係性」と言えるでしょう。
エンゲージメントを大切にし、様々なシーンで深いつながりを構築するのが Lovable Company になっていくための大切な視点です。そして、エンゲージメントは、深い感情でつながり合える共感と、それを得られる体験のデザインを通して生まれます。
恋愛にたとえるなら、一目惚れはあるにせよ、その後に想いを重ね合わせるような共感と、それを実感できる体験があってこそ、ともに進むパートナーにまで発展していきます。
企業と顧客とのエンゲージメントを高めるためには、「共感」がキーワードになります。共感を生み出す体験をデザインし、構築していく。そして、顧客からの共感を引き出すためには、その顧客に接するスタッフもまた、その企業に高くエンゲージメントしている状態が必要です。そのために、スタッフと企業、そしてスタッフ同士の共感を高める体験をデザインし、実行していく。
その旅路には「狼男を倒す銀の弾丸」のような短期的な解決策はありません。
土を耕し、種を蒔き、作物を育てるように、その組織のコンディションを確認しながら、ひとつずつ丁寧に進めていく。そうすると、良い結果につながる可能性が高まります。
企業とスタッフ、そして顧客のエンゲージメントデザインを始めていきましょう。